「ジークアクス」とは「ガンダム」シリーズIPにおける何者か?

史実の再解釈~IFの歴史~

既にゲヲログで伝えているようにこのアニメは歴代の「ガンダム」シリーズと違って「もし一年戦争でジオン側が勝利したら…」という仮想戦記を描いている。これが大胆な試みであることは間違いない。IFの歴史を描くことで「ガンダム」シリーズの再解釈をしている点が特徴なのだ。それに応じてファンはトトカルチョ的な評論を多く出来るので口コミ性が豊富十分。優れた論考を出す優秀なファンも多い。解釈のやりがいがあるからだ。

そもそも「ガンダム」シリーズは”こういうもの”である

一方「ガンダム」というブランドで作られてきたアニメーションは監督や時世によって作風が大きく変わることも多い。つまりIFの歴史を描いているという点ではかなり特異なのだが本質的に本来あるべき「ガンダム」シリーズというアニメIPの作り込みの王道を行っているともいえる。このふたつの基軸となる想像力の持つギャップが「ジークアクス」を魅力的にしている。「もしこうなったら…」と「こういう解釈もある」というふたつの基軸は一見似ているようでウェイポイントのベクトルが違っている。「ジークアクス」がそもそも素晴らしいコンセプトを持っている証左である。

新旧モビルスーツ・新旧キャラクター

「もし一年戦争でジオン側が勝利したら…」という歴史解釈をする以上登場するモビルスーツやキャラクターは歴代のものにインスパイアされつつも継承されるものでなければならない。モビルスーツの面ではザク/リック・ドム/ガンキャノン/キケロガ/サイコガンダムといったシリーズにおける馴染み深いものが登場する。キャラクターの面ではシャリア・ブル/キシリア・ザビ/マ・クベ/バスク・オムといった歴代の名キャラが数多く登場している。その一方でマチュ/ニャアンといった新キャラクターもまた多く登場している。さらにはZガンダムの系譜を受け継ぐムラサメ研究所のドゥー・ムラサメも登場している。

旧作ファンにも新規ファンにも配慮を見せる「ジークアクス」

史実の再解釈が行われていてストーリーに大きいスパンのアクセントが付いているのと同様IFの歴史の中に設定されたモビルスーツやキャラクターが確かに居るので旧シリーズファンならばなおのこと新しい発見を見出すことが出来る。かつて見た別の「ガンダム」シリーズにおける記憶から引っ張ってこれるわけである。では今作から「ガンダム」シリーズを見始めたという新ファンに優しくないか?というとそうではない。新ファンも新しい設定要素とともに「ジークアクス」の世界に馴染めるように上手く作り込んでいる。

具体的にどこが新規ファンに優しいか~スケイルの大きいデザイン~

例えばモビルスーツデザインやキャラクターデザインなどの面で新規ファンの好みから外れないように至極まっとうに工夫されている。特にモビルスーツは旧作から新作に移り変わるプロセスにおいてデザインが一新されているものもあって「ジークアクス」だからこそできるデザイン性を譲っていない。例えば7話ではドゥー・ムラサメがサイコガンダムを操縦してリフレクタービットを駆使するシーンがあるがそれは以前見たリフレクタービットと同等では決してなく有機的な動きをするサイコミュ兵器に代わっている。サイコガンダム自体のデザインも有機的になっていて見ていて新鮮さがある。他のモビルスーツも新たな解釈の元にリビルドされていて「Zガンダム」の時代からできていたことと対比してみるとやはり今見ているからこそ面白い面が多々ある。

まだ真意が見えない伏線

シュウジという謎の青年の消失/ニュータイプとキラキラの謎/赤いガンダムの存在意義/シャリア・ブルの本件への介入/マチュとニャアンの行方…伏線でまだ回収の動きが見えない点が多くある。これらすべての伏線をしっかり回収して最終話まで行きつけるかという点が若干心配になる。思えば「ガンダム」シリーズ屈指の革新作と評されている「水星の魔女」も微妙に伏線回収しきれなかった点が多くあったのは記憶に新しい。だからこそ「ジークアクス」はこの点を配慮してほしい。伏線を回収してストーリーを厳密に収束できればシリーズ正史の評価に劣らない作とのレセプションを不動のものに出来ることは間違いない。

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