傑作として知られる「コマンドス」IP最新作の報が入ってきた。私も今興味深く各ニュースサイトを見ている。他方この「コマンドス」ライクなゲーム制作でコアSteamerを中心に知られたMimimi Gamesというインディーデヴェロッパがかつてあったことをあなたはご存知だろうか?実はこのドイツのゲーム開発会社は作るゲームのセールスは好調だったしIPも着実に増やしていたのに閉鎖せざるをなかった。これはなぜだろうか?この理由についてはAUTOMATONの記事がとても詳しい。理由はいくつかあるがその顛末も含め簡潔に箇条書きで表そう。
2008年にドイツミュンヘンにて設立されたインディースタジオMimimi Games
「Shadow Gambit: カリブの呪い」がスタジオとしての最後の作品となった
「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」「Desperados III」なども傑作として高い評価を得た
順風満帆に開発実績を重ねているかと思われた矢先スタジオ閉鎖の計画が突然発表された
ファンには最大限感謝しているがゲーム開発に捧げてきた時間を顧みると大きな心身の負担にもなっていた
開発費が膨れ上がっていくなかでステルス戦略ゲームの作品から得られる収益では持続不可能な状況になった
今から他のジャンルに挑戦することは難しいこともまた閉鎖の原因である
これがAUTOMATONが記事で伝えるMimimi Games閉鎖の顛末である。つまりゲーム制作が心身の負担になっていたとともに「コマンドス」ライクのゲーム(ステルス戦略ゲーム)の開発と販売での収益モデルを継続することに無理が生じたことが直接の原因であるというのだ。この件についてはゲヲログ2.0で既に散々と伝えているのだが今一度ゲヲログ1.5のほうでその問題性を吟味したいと思うのだ。…といいつつもゲヲログ2.0のほうがよくまとまっているので復習程度にはなるが。
本来、資本主義とは、カネのためにあらゆる経済的戦争を代理するような性質を持つ社会体制のことだ。つまり、理想とか経営理念というものは、お客様のためにだとか三方良しだとかことさら繰り返されていわれてきたけど、その実、株主にお金を還元するという資本主義の大筋の論理とは自然発生的に矛盾が生じているということに他ならねーんだ。ゲーム開発と利益性は当然前段でその両立を否定したんだけども、大きくスパンをとれば悪い面においても頑として同時にあるっていうことなんだよな。
言うまでもなくゲームは売れれば良いというわけではない。売れても駄作は駄作だし一方で売れれば資本主義の論理としては何の問題もない。ただクオリティと売上を両立させるということは相当難しいことである。要するにゲーム制作というのは矛盾している資本主義の分野なのである。ゲームを楽しんでほしいということとセールスを重視する姿勢というのは本来別腹であるはずだ。だが現代の資本主義の論理においてはなぜかゲーマーはその両方を必須としている。これは明らかにおかしい論理でどっちともつかずという論でもある。
簡単に言ってしまうとゲーム会社とは大工さんと同じ職域なのである。建築分野における大工さんは職人であり設計主でもある(ついでに行っておくと大卒の大工さんが近年増えている〜設計と建築が両立できる仕事が魅力的だから〜)。ゲーム開発者もこの職域と同じなんである。というか職人であって設計主であって営業担当でもある。ゲームを作り売りサポートするという責任がついて回るのである。めっちゃくちゃ大変な仕事である。ぶっちゃけ大工さんよりも過酷である。ワンオペでなんでもやれなければゲームは作れないし売れない。恐らくこのニュアンスがMimimi Gamesが閉鎖した大義の部分に過酷に関わっているものと推察できる。
そしてその一方で資本の論として売れればそれだけでいいはずなのに品質も高く保たねばならない。物自体が良かったり着眼点が良かったりしても売れなけりゃ意味がないというのも事実だ。だが良いものを売らなければならないのである。ものを売って利益をもたらすということは資本主義の世の摂理であるのにここの部分にゲーム開発会社は矛盾を全く感じてはならない。スピードで勝負する分野でもあるものだから文句を言っている暇はないのだ。どっちともつかずというのはこういう意においてである。過酷すぎる。というか間違いなくゲーム会社はブラック企業である。
現にグリーの社長はこのように言っている(この事例が象徴的によく現状を言い表している)。田中社長の言を賛美するSteamerは一人としていないだろうが資本主義の原理としてこのお方の言っていることは至極当然なことである。数字が重要であるし売れりゃいい・もしくは売れればいいだけではない…馬鹿みたいな板挟みの価値観の中で人生を賭して死ぬ気で働かなければならないのである。返ってくる言葉は恐らくこれだけだろう。「だってキミゲーム好きだからゲーム制作に関わってるんでしょ?」残酷なようだが恐らくこれが真実である。だからこそ言っておくがゲーム会社には就職するな!だがそれを呑んでいいものだけゲーム会社を志望し就職しろ!というわけである。Mimimi Gamesの閉鎖が示唆するものは恐らくばこれだけだろう。