「It Takes Two」のdevとしてその名を世に知らしめたHazelight Studios(スウェーデン)が引き続きElectronic Arts(アメリカ合衆国)と手を組んでリリースする「スプリット・フィクション」が今俄かに注目を浴びている。話の前座になってしまうが「It Takes Two」は「The Game Awards 2021」にて最優秀賞GOTYを獲得している実績を持つ”コアゲーマになればなるほど評価を高く付ける”ことで超有名なIPだ。そして神ゲーを約束するdevの新作が今回取り上げる「スプリット・フィクション」というわけだ。ではこのゲームはどういうゲームなのか?
新作の主人公となるのはライターでSFパート担当のミオとファンタジーパート担当のゾーイ。二人はライターとして職務を遂行する中でとある装置のトリックにはまってしまう。自身たちが生み出した創作活動つまりフィクションの世界に取り込まれてしまうのだ。もともとそれほど仲が良くなかった二人は友情を深めながらこのトリックからの脱出を試みることとなる。「It Takes Two」に続く協力プレイ系のアクションADVの史上最高傑作を目指したのがこの「スプリット・フィクション」。ローカル・オンラインでの協力2人プレイに対応しCo-opシステムを持つという点でこのゲームは「It Takes Two」の偉大なる続編なわけである。
いわばこの手のフィクションの作風としてはノルウェーの作家であるヨースタイン・ゴルデルによる「ソフィーの世界」が一般的に良く知られている。創作活動の内部に取り込まれそこからの脱出を試みるというストーリーはハイデガーの存在論をテーマにしているともいえるだろう。このインスピレーションは単なる思い付きではない。事実哲学に詳しいかたならば至極当然に納得のいくアイデアであると(「ソフィーの世界」邦語版の解説者や私自身は)とらえている。
コアゲーミング層が好むゲームメディアであるAUTOMATONは軒並み高評価を付けているメタスコアが「一定の指標である」ことに留意しながらも「メタスコア上の傑作が多い2025年中で最高のスコアをたたき出している」とも言及しさらにかねがねその記事にて本作「スプリット・フィクション」を好意的に評価している。そしてこの傾向はAUTOMATONだけではない。例えばゲームウィズが・Game*Sparkが・電ファミニコゲーマーがそれぞれの記事にて同様の評価を下していると言っていいだろう。AUTOMATONは同記事にて次のように書いている。評価の実績と裏付けは2025年中で”一様”十分というわけである。
ちなみに2025年はすでにいくつも注目作が発売され、いずれも高評価を獲得している。たとえば、2月28日に発売されたばかりの『モンスターハンターワイルズ』は90、『キングダムカム・デリバランス2』は88だ。そのほか注目作としては、『真・三國無双 ORIGINS』、『龍が如く8外伝』、『Civilization VII』、『Avowed』などが挙げられるだろう。『スプリット・フィクション』のメタスコア91という記録は、そんな並みいるタイトルを抑えて、現時点で2025年の最高のメタスコアを記録したかたちだ。レビュー解禁されたばかりの発売前タイトルながら、すでに大好評の様相を呈している。
一方でメタスコアについては、ゲームの面白さが純粋に評価されるのではなく、バグや最適化不足・バランス調整不足などがあまり見られない、「粗が少ない」ゲームが評価されやすいという議論もある。また、メディアレビューといえど、評価基準はプレイしたライターによってまちまちであり、メタスコアはゲームの評価における一つの目安に過ぎないことには留意すべきだろう。とはいえ、話題作がすでにいくつも登場している2025年において、本作が今年最高評価を獲得したことは注目に値するだろう。正式に発売された後の、ユーザーからの評価にも注目されるところだ。
『It Takes Two』開発元の新作『スプリット・フィクション』、「今年最高メタスコア」に輝く。すでに大作並ぶランキングで、前評判からトップ獲得 – AUTOMATONより引用
ゲームそのもの内容はどんなものなのだろうか?ゲーム「スプリット・フィクション」はサードパーソン環境でプレイするアクションADVである。プラットフォーマー系のゲーム性も多分に含んでおりゲームを遂行する中で時としてエネ三ーと対峙する必要も生じるという。ステージのメカニズムを意識しながらプレイするタイプのアクションとADVの融合したゲーム。SFパート(ミオが担当したストリー創作パート)とファンタジーパート(ゾーイによるストーリー創作パート)を往復しながらゲームは進む。かたやレーザーソードを駆使したり他方ではドラゴンを指揮することもある。プレイヤー二名はそれぞれのプレイアブルキャラクター(ミオとゾーイのこと)の特徴的な能力を協力しながら活用し共に困難を克服することとなるという。
ゲーマーであればあるほど気になってくる神ゲーの感触・歴史に残る傑作の予感がする「スプリット・フィクション」はPS5/Xbox Series X|S/PC(Windows Store/Steam/Epic Games Store)を対応プラットフォームとして2025年3月7日(来月)に配信予定。もちろんゲームメディアによっては絶賛だけではない。実際メタスコアで70をつけたGaming Boltが「ストーリーに粗がある」と指摘するように弱い部分(と見受けられる点)もあるようだ。あくまで私の感覚で指摘するに過ぎないが本作は北欧のゲーム業界がそれ以外他社とは癖があって毛色が違っていることを実感することのきっかけとなる一作なのではないだろうか。