荒川弘論~「ハガレンの再来」「ハガレン以上」そして「ハガレンのアップデート」


Arakawa’s latest manga, “Yomi no Tsugai,” may seem unable to answer all the doubts held by fans of her earlier work, “Fullmetal Alchemist,” but that view is mistaken. It recombines familiar elements in a new way and adds fresh ideas, creating a strong new work. In this sense, it updates the spirit of “Fullmetal Alchemist” through reflection and evolution.


「黄泉のツガイ」を巡る懸念

というかね、「黄泉のツガイ」を巡っては懸念ってあったと思うんですよ。ゲヲログの友人も言ってたけど、「鋼の錬金術師」はマジで良く出来てた。終わり方もあれで良かった。100点満点のところを120点行く出来だった。だからリメイクなんていらねえ…みんなそう思っている。だからこそ「黄泉のツガイ」が「銀の匙」に続いてまさかまさか成功というかなんというか、しっかり落ち着く漫画作品になるかどうかってのは判断がムズイところだった(「銀の匙」は酷評されることも多かった—「鋼の錬金術師」と比較されることが多いからね)。

ミクロを描いてしまった「銀の匙」

「銀の匙」に至っては、あまりに描く世界観のスケイルが小さすぎるという酷評が立つこと立つこと。ギャグ主体だったりミクロな視点からの漫画だから仕方ない面があるよ。もいちどハガレンみたいな壮大な雰囲気の興奮をってみんな思ってたやん?絶対。それを荒川は「黄泉のツガイ」でしっかりやってるじゃないか。だから漫画として面白いし、アニメとしてはもっと面白いように成り立っている。期待はされてなかったんだよ、ハッキリ言って。ハガレンが金字塔過ぎたので、それに続くIPはあり得ない…まぁ、それでも読んでみるか…ぐらい。でもそれで良かった。存置してる問題ももちろんある。

キャラの書き分けが下手で上手な荒川弘

例えば、キャラの書き分け。荒川はキャラの描き分けがなかなか難しいのでは?と思うのは今でもそう。例えば、クール女性キャラといえばハガレンのホークアイにどうしても似ちゃうし、定型的なビジュアルしか出せないんじゃねえの?っていう疑念は今でも晴れてないと思うんだ。でもね、それだけで収まらない理由もあるよ。それがビジュアルに潜む内面を漫画で描ける作家だということだとゲヲログは思うのだ。つまり心情とかが性別とかビジュアルの記号内にあって、そここそが固有のキャラクター感を出せているという、荒川流の利点のことをこれは指示するのである。

ビジュアルに潜む内面を描ける数少ない漫画家

キャラクター特有の空気感をしっかり出せてそれが固有のキャラの表情、それも内面的表情に出来ている。ビジュアルがホークアイに似てても内面の表情を微妙なセンテンスだけで描ける作家なんだよ。これが凄い偉大な事なんだよな。あと「黄泉のツガイ」ではしっかりとマクロな視点から漫画を描けている。総じて言うと、マクロから描けてて個性的・特徴的、だから読む価値があって、単に「ハガレンの再来」だけではないのだ。ハガレン以上を目指すハガレンの後継作・それでハガレンと違った面もある後継作。これ最強やん?マジでスゲエことなんだよ。漫画家としてあり得ない現代のレベルなんだよこれは。

青天井=ハガレンだったはずなのに

ハガレンは青天井だったのだ。だから荒川作品もハガレン以上は無理だよなって思ってたファンが多いんだよ。でもね、工夫してきた…マジで。例えば、「黄泉のツガイ」はその導入部が「日常の崩壊」から始まっている。これも凄い点だ。ハガレンでもホムンクルス形成の失敗から始まっているけど、微妙にスケイルの形が違っていて、大きいながらも型の違う側面を魅せてきたよね。いわば「銀の匙」からの日常を積み上げる行動・行為に対し、「黄泉のツガイ」は平穏な村が突然蹂躙されるハガレン的な衝撃から始まる。謎も多い。極めて多い…。この「非日常への転換」が、読者の期待していた「ハガレンの再来」感にクリーンヒットしたわけだ。

「ハガレンの再来」

また次点、「善悪の揺らぎ」の点でもハガレンに似ている。そしてまたまた、型が違っている。それが故に、単なる勧善懲悪でない側面はハガレンよりもより強くなっていて、構造的議題になりそうですらある。これはハガレンのホムンクルス戦で見せた「敵側の理屈」や「世界の複雑さ」を彷彿とさせつつも、そのスケイルの大きさは保ったままに型が異なっている。これも「ハガレンの再来」を想起させる点。第三に、「アニメ化への親和性」も高いよな。この作品はアニメで映えるっていう点が凄まじい出来。まさかここまで来るとは…そうアニメを見始めたファンも多いだろう。

「ハガレン以上」及び「ハガレンのアップデート」

なんといっても、空間を媒介したミドルレンジのバトル、加えてダイナミックな造形、なにより先述したような「ビジュアルに潜む内面」が声や動きで補完されることで原作である構成を超えていると言ってもいい。ある意味、ハガレン以上…(まだ未確定だけどほぼほぼ超えて来るとすら思う…)。ハガレンの反省点もあると思うよ。例えば、賢者の石を巡る問題とかちょっと設定的に似ていたりダレが避けられなかったり。その辺りも荒川流の「ハガレンのアップデート」があるはずなんだよ。すげえんだよこれって。あの天才漫画家:タイザン5でさえ短編でしのいでいる感がぬぐえないっていうのに(あえて批判調・比較調で言ってんだけどさ)。

見るべきだよこれは!マジでサブカル史に残るMUSTな一作なんだろうな。