傑作ローグライク脱出系FPS「SULFUR」はどこがクソなのか?

傑作ローグライク脱出系FPS「SULFUR」はそのSteamでの正式販売以前から特段注目を浴びてきたゲームだ。私もこのゲームのデモ版を口が酸っぱくなるほどやりつくしたし期待感が高まるあまり発売以前から常に”これは絶対にフルプライスで買いたい!”と思ってきた。この際ハッキリ言うがリリース後その期待は裏切られたといっても過言ではない。たしかに「SULFUR」はすごいゲームだし今でもそう思っている。では「SULFUR」はどこがダメなのか?このゲームがダメな点はたったひとつだけだ。それが”高難易度”と”初見殺し”をはき違えている点である。私が提起しているふたつの要素はどう違うのだろうか?

まず”高難易度”は読んで字のごとく「難易度が高いこと」を表す。ただしこの言葉はその「高い難易度の中でゲーム的にクリア可能なプレイ性があること」も意味する。そういう意において(少なくともゲヲログが提示する文中では)”高難易度”=”初見殺し”ではない点に注目してほしいのだ。つまり”高難易度”≠”初見殺し”なのである。”初見殺し”とは何か?という解説も必要だろう。これはゲームで相まみえた敵(特にボス)が「一回のプレイ性の中ではクリアが到底不可能なこと」を指し示している。つまり「初見ではクリアできないこと」を意味しているのである。二つは似ているようだがゲームの本質的には全く違うのだ。

「SULFUR」もこの意味を混同してしまっている点が唯一このFPSのウィークポイントだ。私は今でもそのゲーム性こそ絶賛しているがこの”高難易度”=”初見殺し”を意味していて”高難易度”≠”初見殺し”を意味していない点においては「SULFUR」をとてもこき下ろして酷評している。例えばファーストステージ「洞窟」のボスであるカズンは間違いなく”高難易度”≠”初見殺し”である。つまり初見で適切に対応すればクリアが可能なのだ。セカンドステージもサードステージまま良い塩梅の設計だろう。だがステージが「生垣の迷路」に入ったあたりからゲーム「SULFUR」の行く末が迷走しがちになるのは否めない。

例えばこの「生垣の迷路」の追手は「ゲーム中のどんな武器を用いても絶対に撃破不能」であり「対処方法を事前に知っておき巻くこと」をプレイ経験上知識として会得していないと必ず詰む(ゲームオーバーになる)のだ。そしてステージが「地下牢」を経て「城」に行くに従いその傾向は強まる。厳密に言うと「城」のボスである聖ルシアの存在がゲーム「SULFUR」をクソゲーに至らしめてしまっている。なぜだろうか?それは聖ルシアの挙動に依るものが大きい(繰り返すように”初見殺し”の度合いがこの聖ルシアに至ってとても強くなることが根本的な悪要因なのである)。

聖ルシアは一定程度のダメージを被弾するとプレイヤーの視界を奪ってくるという挙動を示す。この暗闇の中でプレイヤーは聖ルシアの本体である眼球玉を銃火器で撃ち落とさなければならない。この挙動にある程度の対処法を知識として会得してないと「生垣の迷路」と同じように必ず詰む(ゲームオーバーになる)のだ。この知識がないとプレイヤーは永遠と暗黒の視界の中で炎上ダメージを加えられてしまう。そして炎上中は視界が炎で遮られさらに眼球玉を撃ち落とす難易度が上がっていくという曰く付きのシロモノなのである。

この聖ルシアの挙動ははっきり言って要らない。もっと工夫することができただろう。ボスの攻撃パターンに彩りを持たせるとかヒントをNPCに語らせるとか。なぜそうしなかったのかが私には理解できない。到底理解できないのだ。これが”初見殺し”ではなくて何を”初見殺し”と呼ぼうか。この点でゲーム「SULFUR」は”高難易度”と”初見殺し”を完全に同一視してしまっている(”高難易度”=”初見殺し”に解釈してしまっている)のだ。こうした知識の問題はゲームを往々にしてクソゲー化してしまう。予備知識がなければクリアできないならばゲームとは言えない。ゲームはNetflixドラマ「イカゲーム」におけるゲーム性以下のシステムを示すようではあってはならないのだ。必ず”初見殺し”に徹することにある種の抵抗感がなければゲームはゲームとは言えない。セカンドゲームで最低限クリアできるような要素は示してはいけない。それはたとえローグライクと言えども。

「風来のシレン」シリーズは「SULFUR」と違い達人の域に達すれば”初見殺し”を克服できる微妙な”高難易度”性を持っている。それは賞賛すべきローグライクのバランスである。ゲーム「SULFUR」にはその要素がとても薄い。というかないのである。ローグライクだからこそゲームの”初見クリア”の可能性はある程度残してなくてはならない。”初見クリア”の把握性と”初見殺し”の徹底性を勘違いしてしまうからこうしたボスの挙動が生まれてしまう。それはゲームに対するプレイヤーが抱く没頭感を無残につぶしてしまうことに繋がりかねない。あえて語弊を承知で酷評するがこの点で傑作FPS「SULFUR」はクソゲーなのである。

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