「ポケットモンスター」(以下「ポケモン」)の世界は当然のことながら現実の動物虐待を推奨しているものではない。よって法的には問題がない。問題なのはそれが「表現として妥当かどうか」という点に絞られる。「表現として妥当かどうか」という観点から「ポケモン」という作品を紐解くのは無駄な時間ではないと思う。これは表現の適切さを問う問題なので「表現の権利がどこまで許されるか?」ということだからだ。さて今更ながら振り返ると「ポケモン」の世界設定は次のようなものだ。
「ポケットモンスター」(以下「ポケモン」)という不思議な生き物が生息する世界において、ポケモンを自らのパートナーとし、ポケモン同士のバトルを行う「ポケモントレーナー」たちの冒険を描くロールプレイングゲーム (RPG) である。主人公(プレイヤー)は、初めに旅の相棒となるポケモンを1匹もらい、ポケモントレーナーとなり旅に出る。旅の目的は2つあり、1つはポケモン図鑑を完成させること、もう1つはチャンピオンを倒すこと。草むらや洞窟、海など、さまざまなところに生息する様々なポケモンを捕まえ、仲間にしていく。主人公とポケモン達はライバルや他のポケモントレーナー達との勝負を交えながら成長し、ジムバッジ[注釈 1]を集め、ポケモントレーナーの頂点であるチャンピオンを目指す。
Wikipediaは「ポケモン」シリーズの目標点は「ポケモン図鑑を完成させること」と「チャンピオンを倒すこと」としているがこれは本質をとらえていないと私は思う。「ポケモン図鑑を完成させること」はこれ即ち「野生動物をとらえ自分のペットにする記録図鑑を作ること」である。つまり「野生生物の百科事典を作ること」でありこのこと自体は現実の物事とかなり似ている。だから特段問題はないように思える(「ポケモン」の世界における野生動物のキャッチの方法にどう規制がかかっているかは不明なこともあって)。問題は次の点「チャンピオンを倒すこと」にあると私は思う。
これはいわゆる現実における「闘犬」にかなり近い。いわばペットにした野生動物を戦わせその勝敗によって物品のやりとりがされるのが「ポケモン」である。しかも「ポケモン」の世界ではこれが当然のように為されている。もちろん「ポケモン」の世界でどうモンスターを使役した闘技の規制がかかっているかは不明。だが前述の「百科事典を作ること」とは明らかに倫理的なレベルが違う。空想の世界だからいいんだっていう論理はある。だがそれが「倫理的に妥当かどうか?」をイメージすることは時間の無駄ではないとも思う。前段で述べたよう「表現の権利としてどこまでが許されるか?」という問題に繋がるため「空想の世界だから(単純に)良いのだ」とは言い切れない。
近年に入り、動物愛護の観点から闘犬を禁止する国が増えています。日本では闘犬自体を禁止する法律はありませんが、一部の自治体は条例で闘犬を禁止しています。2020年時点で、東京都、神奈川県、福井県、石川犬では条例によって「闘犬、闘鶏、闘牛など動物を互いに闘わせてはならない」と定められています。北海道でも闘犬を取り締まる条例が存在しますが、「土佐犬を除く」とされ、土佐犬による闘犬を行う場合は許可を得て決められたルールに従うよう明記されています。