なぜ少女漫画と少年漫画の溝は浅くなったのか?

なぜ少女漫画と少年漫画の溝は浅くなったのか?

なぜ少女漫画と少年漫画の溝は浅くなったのか?明確な理由付けがあると私は思う。まず第一にライトノベルの存在は見逃せない。ライトノベルはストーリーはもとより心理描画にかなり長けていると言われることが多い。これを重要視しないラノベは大方駄作扱いである。ラノベのファンならばよくよくこの傾向は納得のいく事実だ。そしてこういったラノベの存在が漫画やアニメといったクロスオーバーの商品化のブレイクのキーとなることもまた多い。

ラノベのもたらしたクロスオーバー

それゆえ例の「ハルヒ」の件以来心理描画を本来重要視していた少女漫画とどちらかというとストーリーの魅力で推す少年漫画の概念を引き繋ぐことが多くなってきた。ラノベは文学評価はなくとも活字だから文字で表現される。こういったメタ文学・ラノベの世界があらゆる漫画表現・アニメ表現をも含有しクロスな価値観を提唱するようになった。その余波を受けて少女漫画と少年漫画は引き裂かれるべく存在であることがなくなってきた。そしてこのラノベの存在は価値観の変遷というさらなるコアなクロスオーバーをもたらすこととなる。

消費者の価値観の変遷

言うまでもなく価値観は2000年代以降爆発的に拡散してきた。その代表とも言えるであろうLGBTQ+は現代社会で見受けられるDEIの概念である。もちろん話はLGBTQ+に限らないが一番わかりやすいのでこれをここでは取り上げているだけだ。女装ものや男装ものがままモダンアニメスタイルフィクションで見受けられることも考えると日本人のアニメーション文化・ラノベ文化・漫画文化はLGBTQ+の持つ魅力を単純なDEIに収まらせる傾向にないのがよくわかる。ごった煮にしていわばデータベース的な消費に落ち着かせるのが日本人はとても上手いのだ。その意においてアニメーションは数少ないLGBTQ+のDEIの成功事例ともいえる。

DEIは実は日本人に向いている

このように価値観が爆発的に拡散しそれらを収束させることのできるモダンスタイルのアニメーションや漫画コミックはうまくDEIを取り入れたと言える。例えば同性愛などへの理解は当然ポストモダンの時代の要請でもあったがこの概念を上手く取り入れていてユニークに表現してしまうのが日本人はサブカル分野で得意なのだ。非現実的な描画があっていいコミック文化にとってはこれは当然機の良い要請でもあった。どんどん亜種を取り入れて良いところは作品の特徴にしてしまう。この気の利く利点が得に描画が容易なコミックにはあったので少女漫画と少年漫画はマージしていったのだ。まさに融合である。

漫画は表現の革新系であるからボーダーレスに貢献する点が多い

またコミックの読み手もこの傾向を新鮮さでもってして迎え入れた。快くだ。読み手は当然さらなる表現の革新系(誤解を恐れず言えば左翼的な表現である)を目指し様々な価値観を認めそれらのマージを快く受け入れたのだ。しかもコミックの自由奔放さと合わせてそれらを求めたため従来は境界性(ボーダー性)であった漫画のジャンルというものを上手く克服してしまった。ニーズの拡散とそれに伴う収束は作り手側だけではなく読み手側としてもごく都合の良いものだったのだ。興味深く読める新しい価値観を積極的に取り入れてそれが上手く収束すればするほど完成度の高い物語としてファンは喜んだ。表現の多軸化を読み手がとてつもない勢いで歓迎したのだ。間違いなくこの傾向は強まっているだろう。

接近した少女漫画と少年漫画

これまではボーダーで区切られていた少女漫画と少年漫画だが作画の特徴も含めて様々なニュアンスを取り入れごく自然な創作哲学上接近した。結果両ジャンルは区切られることを是としなくなったどころか素直に受け入れ始めた。少女漫画風の少年漫画・少年漫画風の少女漫画,,,そして両者を共々取り入れたバランスの良い漫画。これらすべてにわたりどの要素要素がどこに配置されていても上手い具合に消費者は歓迎していくようになってきた。ごく自然な消費形態論の中で様々なる文化を見て組み入れるDEIはアメリカでは失敗したかもしれない。だが日本という亜種を問い入れ模倣からオリジナルへと物事を変容させることが得意なお国柄には実は合致していると言える。

日本の模倣発オリジナル文化はコミック分野だからこそ容易である

それは空想上の物語を追求するMAGといった文化表現に期することも多々あるがこれはむしろ日本の輸入文化発オリジナル化の文化と言ったほうがポジティブな捉え方である。この国は模倣が上手い。そして模倣の先にあるオリジナリティを追求することもまた上手い。工学産業分野も基礎研究分野もまたそうである。そしてMAGは軽々とそれを乗り越えてしまってボーダーレスの時代の要請に答えるようになった。MAGは表現が直情的だからDEIはむしろ障害物でもなんでもなく都合の良いマージャーだったのだ。融合のきっかけと言ってもいいだろう。分断を表現にして面白くしてしまえばそれで物事はすんなりうまく行くというわけだ。

空気を読むということのメリット

そのMAGの急先鋒が少女漫画と少年漫画の違いでありそれを超越した漫画産業の特徴なのである。以上まずブレイクとなった事実・次に消費層の価値観の変遷と融合・日本の得意な文化表現という三点で見つめてみたが良く考えればこれらはどれもがごく当たり前のことである。日本人はこれを無意識に暗黙知として捉えている。だから気付かずに表現をありのまま認めてしまっているのだ。価値観としてわかっていても説明されたことがあまりないだろう。そこが日本人の空気・雰囲気を読む文化面での弱点でありなおのこと強点でもあるわけだ。

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