大塚製薬の製品「カロリーメイト」シリーズがらみのオフィシャルゲームが去る2025年9月19日ごろにSteamで配信された。これまでも企画としてプログラマーや技術者など所謂ギークに寄り添ったエンタメを大塚製薬は打ち出してきた。今回作られ配信されたSteamにおけるブツもどうやら期間限定の販促企画の成果ということらしい。そのタイトル名は長く「BALANCED FOOD CalorieMate FOR GAME CREATORS – JELLY MISSION -」というもの。ではどんなゲームなのだろうか?さらに本記事にて大塚製薬と似ているSteam上での新たなる試みもいくつか紹介する。
このゲームはSteamでリリースされている割に対応言語が日本語だけでインターナショナルな性質を打ち出しているものではない。だが内容は斬新。ゲームではプレイヤーが「カロリーメイト」製品に成り切って冷蔵庫から脱出・ゲームクリエイターである主人の元まで”自分”を届けるという思わず大草原不可避の壮大なアクションアドベンチャーになっている。この際ハッキリ言っておくが採算度外視の馬鹿ゲーの類と見ていいだろう。大塚製薬としてもこの矛盾は乗り切ったうえで今後他分野とのシナジー・共創を見越してこういった企画実現をしたものと想定できる。
この類のSteamでの販促企画は日系企業に限っても実は珍しいものではない。例えば言わずと知れた世界的企業花王だって「しずかなおそうじ」というバカゲーをSteamにて日本語環境のみでリリースしている。ゲーム「しずかなおそうじ」は花王謹製のおそうじツールを駆使してホラーテイストな3D探索をしながら宅内清掃するという曰く付きのバカゲーシミュレーションゲーム。日本ではお馴染みのおそうじツール「マジックリン」「クイックル」などがそのゲーム内で登場・躍動する。花王の試みだって採算度外視のキャンペーンであることは間違いないだろう。いわば戦略的セレンディピティを探っているかのようにしか見えない。つかそれが目的なはず。
さらには映像企業として国内で有力視されている会社の松竹もSteamで活動を昨今活発化させている。この企業の場合大塚製薬や花王とは違ってゲームそのもののローカリゼーションに徹するという純粋な別戦略を持っているように見える。そのローカリゼーション活動は特定のタイトルに及んでいて「Gas Station Simulator」の日本語実装を事実松竹の新部門がしているようなのだ。そのSteamページにおいてもパブリッシャーの欄にDRAGO entertainment・HeartBeat Gamesと相並んでたしかにShochikuの文字が躍っている。このゲームではプレイヤーは廃棄されたガソリンスタンドを買収しその復活に賭ける経営者の視点からガスステーション経営をしてくこととなる。
このようにゲームの持つ力に頼る・本来ゲームとは無関係の日系企業がSteamに参入することが増えている現状がある。ゲームひとつ作るのにも結構な人件費がかかるだろうから参入の障壁は高いはずでそもそもタイトルが売れなければ意味ないという前提があるのも事実。だがゲーム自体の売上を見込んで…というよりかは既存の自社製品の魅力を他のルートで販促するという目的は十二分に達成できるだろう。だがワールドワイドなSteam環境でローカライズに英語が入っていない…というのは大いに問題である気がする。ここまでやっているのだから大塚製薬や花王は英語をそれらのゲーム内にしかと入れ込むべきだ。その意において松竹は別なベクトルを向いている。いずれにしたってデジタルゲームで大変興味深い試験的な動きであることに変わりはないだろう。