Steam誕生・革命前夜
Steamが登場する以前のPCゲームはパッケージ販売が主流だった。それをダウンロード販売に置き換えパッケージレスを進めたのはValve最大の功績のうちのひとつだ。最初こそ配信タイトルは初期「CS」等自社のものだけだったがそのうち多くのパーティのゲームを取り扱うようになりその全てに渡りネットワークを通じてゲームを販売する形態を推進してきた。もちろんパッチ・アップデートも自動的に行われるようになりプラットフォームとしての息吹をSteamは始めた。此処に至りゲーム業界はディスクレスの時代に突入した。実にNetflixのサービスがスタートする随分と以前にゲーム業界がその走りをしていたと言っていい。まさに革命である。
インディーゲームの開祖
またSteamはインディータイトル(インディーゲーム)の開祖であったことも重要だ。2000年代後半に入って多くの独自開発者がゲーム開発をして一攫千金を狙える時代に入った。その流れが強く進みAAAタイトル以外にも競争性の高い中小デヴェロッパによるゲームが配信された始めたわけだ。ド級の大傑作「Terraria」のみならずアンテこと「Undertale」「Hollow Knight」「Stardew Valley」といった業界を代表するゲームが作られ大ヒットしてきた。アイデアと実装力さえあればAAAを凌ぐ商業体制を作ることができる状況を自然と導き出し多くのゲーム関係者にその趨勢を知らしめた。新規参入が多ければより多くの技術革新が進むことをゲーム業界で初めて本格的に世に周知したのだ。
イノベーティブサービス/ハードウェアのリリース
またSteamerと呼ばれるコアSteamユーザに対して様々なサービスを開発し時としてデバイスまで手掛けることもある。その様子はまさに今でも珍しいSNSの進化版といっても過言ではなく自然とSteamを巡る状況がSteamerとの親和性を革新性を経て強めていったことを印象付けた。クラウドセーブ・レビュー・フォーラム・ワークショップ(MOD文化)・アーリーアクセスといった要素を次々と必要に迫られValveは実装していった。これはSteamerにSteamer自身が欲すとするサービスをよりファンベースに近しい立場で実装したものであり革新的なニーズ基盤のソフトウェア開発体制を敷いてきた。そのうちハードウェアにも手を出しソフトウェアのみならないデヴェロッピングを実践していったわけだ。その近し最たる成功例が「Steam Deck」である。SteamOS/VRといったニッチなところまでその食指は及び膨大な数のイノベーティブサービスがリリースされてきた。
世界基準のプラットフォーム・Steam
SteamerはSteamアカウントさえあればどの国でも同じようにゲームの購入と起動ができてまた実績(Achievements)をはじめとして世界と繋がることができる。まさに「世界共通のプラットフォーム」を作ったのがSteamを運営するValveだったと言える。プラットフォームという言葉が表現するようにSteamはValveによるPCゲームの世界における基準・基盤と言いきっていい。そのプラットフォームは先進的な機能性を誇りフラットな環境でSteamerを受け入れ続けている。このようにPCゲームの基盤・プラットフォームを巻き込んでその界隈の技術革新を積極的に進めているのもSteamを運営するValveの実績と言っていいはずだ。此処に至って20年以上に渡りValve/SteamはMicrosoftと並んで「PCゲームの王」となっている。
ソフトウェア革命・SNS全体主義のデプロイ
さてこのようにValve/Steamが存在しなければ今のゲーム産業の形は存在しなかったと言い切っていい。デジタル配信・インディーゲーム登用・クラウド対応・マルチプラットフォーム適合はSteamがなければ今存在しなかったわけだ。このように「デジタル流通革命」に始まりそれのみならず「総合的なゲーム産業の民主化」を進めたのがValveの功績であるだろう。それまでは要素が分離していて多くのゲーマの民意を抽出し集権するプロセスはゲーム産業になかった。ただAAAタイトルが席巻し市場を独占していただけだったのだ。「BF」や「CoD」が一流タイトルと言われる時代はもう完全に無くなったと言っていいはず。これがValveによるゲーム民主化の本質だった。こいつがなければDiscordだってなかったはず。まさにValveのSteamはソフトウェア革命/SNS全体主義のデプロイだった。