CairnオマージュSS~「岩壁登攀」

命を賭したロッククライミングの“目的”に目覚めたのはいつのころだっただろうか?
幼少期?学生の頃?それとも成人してから?プロになってから?

―歴史を知るためにではない。
―体のバランスを取るためにではない。
―私自身の夢をかなえるためにでもない。

『自然の岩壁を登ること』――それのみがロッククライムの“真の目的”。
滑落した先人たちの命を超えて、私もまた命を賭す。

間違いなく私も堕ちた先人たちと同様に、ここから滑ればその人生を終えることになる。
だがそれでも登る。そこに登るべき山壁がある限り。

この壁を乗り越えても、また壁が待ち受ける。
クライミングの本質は元々“登るためだけ”にあるのだから。

壁を“渡り歩いた”先に、また難攻不落の山壁が私アーヴを待ち受ける。
今、私の岩壁登攀(がんぺきとうはん)の人生はまだ始まったばかりなのだ。

― アーヴ