この方程式は基本的には米国でも同じであり今回話題となっている日本製鉄がUSスチールを買収する場合は完全子会社を目指している点にちょっとした注意（後述する）が必要である。日本製鉄はUSスチールの全ての株式を取得する（これがまさに完全子会社化のことである）と見込まれている。これに必要な金額は2兆円程度らしく算出も簡単である（上述の時価総額計算のための式をそのまま株式取得の全額と考えれば良いだけなため）。USスチールの株式単価が33.33米ドルで発行株数が2億2517万株程度だから算出結果はこうなった。
完全子会社化のための式：2億2517万（株数）×33.33（米ドル）＝75億491万（米ドル）
現時点での為替レートに基づき1米ドル=158円として算出すると1兆1千億円程度になる。では日本経済新聞はこれをなぜ2兆円と報じているのか？矛盾があるじゃないかと思ったあなたは優秀である。実は日本製鉄は完全子会社化のための買収に際してUSスチールの1株あたりに出す単価を上乗せしている。現時点でのUSスチールの時価総額と日本製鉄が見込む完全子会社化の方程式の間には隔たりがあることを忘れてはならないのだ。日本製鉄は（1株33.33米ドルではなく）1株55米ドルで買収しようとしているのだ。よって実際の方程式はこうなる。
完全子会社化のための式（修正済）：2億2517万（株数）×55（米ドル）＝123億8435万（米ドル）
同じように現時点での為替レートに基づき1米ドル=158円として算出すると2兆円を若干下回る額（1兆9574億5841万円）になる。これで事実と予想想定式の計算は済みほぼ双方が一致する額が確認できた。完全子会社化のために必要な株式数はその子会社にした会社の株式の全数を取得することが求められるのは米国でも日本でも同じであることが今回の検算によりよくわかったことだろう。
