ゲーミフィケーションは単なるバズワードか?その2

ゲーミフィケーションはバズワードか?

ゲーミフィケーションという言葉が、バズワード(定義が曖昧なまま世間で使われるようになった流行語)であるという言葉は的を得ていないものではない。そもそもゲーミフィケーションとは、どういった定義を持つ言葉なのだろうか?ゲーミフィケーションとは、「ゲームではない文脈において、ゲームのデザイン要素を用いること」のことである。この言葉の定義として代表的なものがDeterding et al. (2011)によるものである。なぜ筆者は、バズワードとしてゲーミフィケーションが使われるようになった、と考えるのか。

その言葉の定義

まず、そもそもこの言葉の定義が曖昧なまま流行語として拡散されていったという事実がある。「ゲームではない文脈において、ゲームのデザイン要素を用いること」という定義は、ありとあらゆるシミュレーションの考え方に基づいて、雑に導入できるものである。だから、単純に、あらゆるシミュレーションの要素を持つ事象に対して、粗雑にゲーミフィケーション定義が用いられてきたという、浅い歴史がある。

コンサルタントとはシミュレーションのことである

例えば、この世に存在するコンサルタント会社が行う事業は、あらゆるシミュレーション(意思決定に伴う事象を解析し、その事象が起こる以前に説得力ある形で再現し提示すること)である。例えば、もし仮に、ある商品を市場に投入したらどれぐらい売れるのか?ということ・サプライチェーンの改善成果はどれぐらいの効果を持つか?ということ・組織構造の改革の成果はどれぐらいの効用を持つか?ということを測定するには、それらをシミュレーションによって再現し提示しなければコンサルタントの仕事は成立しない。

古典的な経済活動をゲーミフィケーションと呼称する流れ

だからこそ、ゲーミフィケーションという言葉が明確に定義され、広く世間一般で使われる以前から、ゲーミフィケーションに該当するような経済活動は存在した。つまり、既にあったものにゲーミフィケーションというバズワードをあてはめることで、その活動を誇張し定型化するような流れがあることは否定できない。これが、ゲーミフィケーションがバズワードである、という理由の説明である。

単なる自社事業のアピール

また、このゲーミフィケーションという言葉が、企業を中心として、事業活動のアピールに使いやすいという現実もあることも否定できない。企業にとっては、ゲーミフィケーションという言葉を使い自らの事業をそう呼称することで、単純にゲームの要素を都合よく取り入れたとし、最新のトレンドまでをも取り入れていることを、世間一般にアピールすることができる。その結果、ゲーミフィケーション導入の結果の効用の測定が曖昧な側面もある。どこからがゲーミフィケーションの成果であり、どこからがそれ以外の成果であるのか、ということがとても把握しにくいのである。

ゲヲログはどう考えるか?

例えば、ゲヲログが行おうとしている研究も、ある種のゲーミフィケーションというバズワードの活用であることは否めない。株式価格の予測は、当然シミュレーションによって再現し提示される、未来予測の手法のうちのひとつである。この手法は、古来から行われてきたアイデアのうちのひとつに過ぎず、利益がどれぐらい上がるか?という古典的な疑問に対する回答を予測しようとしているに過ぎない。ましてや、ゲヲログが行おうとしているのは、回帰分析による未来予測に近く、あまつさえそれ以前の統計量の問題に端を発しているのである。

引用文献

Deterding, Sebastian & Dixon, Dan & Khaled, Rilla & Nacke, Lennart. (2011). From Game Design Elements to Gamefulness: Defining Gamification. Proceedings of the 15th International Academic MindTrek Conference: Envisioning Future Media Environments, MindTrek 2011. 11. 9-15. 10.1145/2181037.2181040.

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