同じ2Dタルコフライク脱出シューターでも私が「エスケープ フロム ダッコフ」よりも「EMPTY SHELL 2」を推す理由


I think “EMPTY SHELL 2” is better than “Escape from Duckov” because it offers a more immersive horror experience with its unique setting, whereas “Escape from Duckov” lacks depth in its gameplay mechanics even though both are the same game genre “Tarkov-like.”


確かに「エスケープ フロム ダッコフ」は面白いゲームだ。脱出シューターというゲームジャンルに新風を巻き起こした素晴らしいゲームであることに疑いようがない。2D版タルコフとしてSteamerの多くが絶賛し高評価を下しているのもわかる。だが私はこの秀逸な脱出シューター「エスケープ フロム ダッコフ」よりも「EMPTY SHELL 2」の方を勧める。あくまで私なりの意見に過ぎないがこれはなぜだろうか?説明しよう。

まず第一の理由として「エスケープ フロム ダッコフ」はUIが微妙という点がある。元々の使っているゲームエンジンUnityのお手製感が表面のUIに出てしまっていて捻りがあまりない。その一方「EMPTY SHELL 2」はハイデザインで様々な表情をUIに組み込んでいる。「エスケープ フロム ダッコフ」がノーマルなUIを実装しているのに対して「EMPTY SHELL 2」はあまりそういったものがなくその代わりCUIみたいな特徴あるインタフェースを実装していて特異性に富んでいる。

その意において「EMPTY SHELL 2」にはかの傑作ローグライクゲーム「Cogmind」感があるのだ。CUIとGUIの境目に位置していてプレイする度に様々な表情を見せてくれる…そんなタイトルである。ゲームとは新規的発見のことなのだから特異で目新しさがなければならないというのが私の個人的な心情である。その期待に「EMPTY SHELL 2」は答えているのに対して「エスケープ フロム ダッコフ」は登場人物のアヒルが特徴的なだけであまり強い個性で答えていないのだ。

また「EMPTY SHELL 2」にはホラー感があるのに対して「エスケープ フロム ダッコフ」はあまりにカジュアルゲーム過ぎるという問題もある。元々「EMPTY SHELL 2」は設定的に「限られた閉鎖空間からの脱出」というテーマ性を特に強く持っているのに対して「エスケープ フロム ダッコフ」は「カジュアルな2Dタルコフ」というテーマ性から脱却できていない。売れてはいるもののハイセンスなゲームではない…というのが私の評価である。

恐らく多くのゲーマが「EMPTY SHELL 2」を初めて手に取りプレイしてみるとこのゲームの特異すぎるゲームデザインに驚くことだろう。暗澹で曖昧なグラフィックスに表面上相成っているからだ。はっきり言って変人の好むような”センスの塊”に過ぎない。元々のゲーム設定を見ればわかるが「EMPTY SHELL 2」のSteamストアページには確かにこうある。以下引用。

新たな遠征が組織された。太平洋のど真ん中にある未知の島へ絶望した志願者たちが送り込まれ海岸沿いの古びた建物に集められ任務遂行のための展開を待っている。ドローンカメラによって捉えられた俯瞰視点で各志願者は巨大な廃墟を探索し謎の組織から与えられた任務を遂行し資源と装備を回収してシェルターへ持ち帰らなければならない──それは自らの生存率を高めると同時に後に続く者たちの希望にもつながる。

一人の志願者が死亡すると別の者が送られる——前の者が命を落とした場所から任務を続ける運命にある。

これだけの文章力を見せられると本作良ゲーの雰囲気が漂っているのがわかることだろう。実際凄いゲームなのだ。優れたローグライク系YouTuberとして知る人ぞ知るカナリーイエローも言うように実はこれが初めてのこのタイプの脱出シューターであるという確証は全くない。彼も言うように「Teleglitch」という元ネタがあるからだ。だが個性的なUIに彩られた暗黒の世界・闇の色彩と言う点でこのゲームは際立って個性的である。まとめてみよう。


①UIの問題

「エスケープ フロム ダッコフ」はUIとしてカジュアルに依りすぎている。特徴性に富んでいないのである。対して「EMPTY SHELL 2」はハードコアなゲームUIに依っている。CUIの特徴や特異性をかなり盛り込んでいて暗澹で彩られた価値観の元でのゲームプレイが約束されている。

②ゲームの持つ個性の問題

「エスケープ フロム ダッコフ」は登場するアヒルが特徴あるだけであとは没個性的あまりにUnity的教科書に沿ったゲームデザインを実践してしまっている。「EMPTY SHELL 2」はそれに対して脱出シューターというジャンルの本来持つ闇の要素・人間の限界ギリギリの心情的な要素をモリモリ盛り込んでいてホラー感が表面ににじみ出ている。

③大局的世界観の問題

「エスケープ フロム ダッコフ」はどっちかというとカジュアルな脱出ゲームである。デカい側面から見ても「EMPTY SHELL 2」のほうが特異性に優れているのだ。「エスケープ フロム ダッコフ」は元々ライトなゲームであり発展性に欠けるのだ。対して「EMPTY SHELL 2」には発展性がある。太平洋の未知の島・絶望に瀕した志願者・廃墟に満ちた閉鎖空間・死ねば別の志願者がその地点から任務を引き継ぐというルーチンに基づいているからだ。


つまり「EMPTY SHELL 2」はその世界観自体が持つ特徴によりプレイヤーに対してホラーの体験を促すゲームなのである。これがカジュアル版2Dタルコフの領域を出られない「エスケープ フロム ダッコフ」との決定的な違いだ。「エスケープ フロム ダッコフ」は確かに紛れもなく優れた脱出シューターだ。ただその完成度の高さ及び遊びやすさは裏を返せば”過剰な安全”に留まっているのだ。UIは汎用的世界観は軽く雰囲気はポップに依っている。

対して「EMPTY SHELL 2」は演出・世界観・そしてプレイフィールに至るまで作品そのものが放つ”暗い輝き”に富んでいる。それこそがカナリイエローも先駆的に言うような「Teleglitch」やまた「Cogmind」の血脈を思わせる異様なまでの暗澹な個性・重厚な体験のことである。脱出シューターにはやはり個性的な美学が必要なのだ。だからこそ私は「エスケープ フロム ダッコフ」よりも強烈でセンスの塊のようなゲームである「EMPTY SHELL 2」を倍プッシュして推すのである。