サルでもわかる漫画レビュー「SPY×FAMILY」縮約の平和と仮初の家族の物語【ゲヲログ1.5版】

『孤児院にいた経緯は分からんがこいつの実の親はおそらくもう…』
大粒の涙を流すアーニャの心に揺さぶられたときロイドは”父”になるのだ。

『ちちとはは…いちゃいちゃ…』
そのアーニャのことばにこそ本来の純なる家族の見識を取り戻すための
偉大な子供の力があるのだと私自身は思えてならない。

~本文より~

「SPY×FAMILY」という漫画のふたつの主題

たしかに「SPY×FAMILY」は面白い。小説版も出ていて既刊9巻に過ぎないのにアニメ化が決まり放映されこちらも大成功。加えてファンブックのような関連本も多く出ている。私も当初はあまり好みの作画ではなかったことから避けてた漫画だったがアニメ版を見て本巻のほうをほぼ全て買った。読んで思うにこの漫画「SPY×FAMILY」はふたつの主題を持っているのだと私なりに思っている。まず”縮約の平和”という主題があり次に”仮初の家族”という主題があると私は考えた。

まずロイドやヨルは平和のために動くという名目ある動機づけを持っている。ロイドはスパイとして世界のバランスオブパワーを保つため動きヨルは暗殺者として動く。この二人の夫婦はあくまで大人の世界のダイナミズムの中で平和を希求する密偵たちだ。だからこそ本作ではロイドもヨルも”大人の世界の中の人間”であり本来は家族を持とうとするような人物ではなかった。ぶっちゃけていえばかなりの危険人物。だからこそまず彼らの目標は第一に”縮約の平和”なのだ。

この”縮約の平和”という言葉はあくまでありていな平和の形態を表しているように思われる。平和はあくまで一時的なものでありいずれ不安定さが世界の政治・経済・人物間の実像の面から呈してしまいその平和の形はしばし脆くなりがちなのだ。つまり平和のありかたは常々実際の我々の世の中と同じく現実的には空想的であり夢想的ですらある。その中でなんとか平和というものを作り守るとまではいかないまでも”なるべく壊れないようにする”という極めてポストモダンに近い21世紀流の平和の世界がこの漫画の中では描かれる。この第一の側面から言えばいわば「SPY×FAMILY」だってゴルゴの現代版だ。”縮約の平和”というものには一切の感情はなく第一段階にしてみればゴルゴ的な世界の動きが練りこまれているに過ぎない。

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