アカポスの女性限定公募は妥当なのか?イリノイ大学助教山田かおり先生とXerオーキド博士の論争をまとめてみた

論争の発端

アカデミックポジションの女性限定公募や理工学系の大学入試における女子枠に関する取扱い方がX界隈で論争になっている。様々な意見があるがまずひとつの論争を振り返ることでこの状況を冷静に解釈する余地を生み出したいと私は考えた。この論争は主としてアカポスにおける女性限定公募の問題に特化したもので女子枠の課題に関する言及ではない。まずはイリノイ大学医学部薬理学科助教(Assistant Professor)山田かおり先生~経歴に関してはご自身によるnoteに詳しい~の問題提起から振り返ってみたい。


山田かおり先生の提起

・女性教員限定公募が国公立に多いという不満がある.

・私立大学だと女性教員率27.5%だけど国立大学だと18.7%.

・女性を増やさないといけない動機が国立の方が切羽詰まってる.

これに対するXerオーキド博士の返答

・性別の偏りをなくす試みは理解しがたいわけではない.

・だが女性が多い看護師や男性が多い自衛官に関して同じ問や試みがないのはなぜなのか?

これに対する山田かおり先生の返答

・政府目標の3割は助教職種では達成している.

・教授や准教授ではまだ3割に言っていないのでこれらの職種で限定して女性公募すればいいという議論は可能.

さらに続くXerオーキド博士の返答

・助教で達成していることは事実として納得できる.

・結局アカポスだけで女性を重用する意味が見えない.

・男女の格差は職種の特性や体格の都合などもあって他の職種でも多く見受けられる.

・これは女性へのある種の差別でもあり男性へのある種の差別でもある.

・故にアカポスだけを特別視する一貫性が見受けられないので受け入れがたい.

さらにこれに対する山田かおり先生の返答

・個別の問題提起は可能.

・例えば公的機関の定めた閾値をその問題提起の理由にしても問題がない.

さらにさらに続くXerオーキド博士の返答

・性別限定公募や性別枠を作る理由にはこういった根本的理由がある.

・「性別が偏っていると少ない方の性別がその分野(職業)を選ぶのに心理的障壁がありそれを取り除くため」.

・だとすると(例えば)自衛隊などの男性の多い仕事でも女性比率を増やさないといけないはずである.

・アカポスの女性優先制度を推し進めるのならば次の二点で説明責任が生じるはずである.

・「なぜアカデミア限定で限定公募をすべきか」「なぜ大学入試の特定の学部にて女子枠を導入すべきか」.

これに対する山田かおり先生の部分的同意

・女性限定公募や性別枠を作る理由はその通りである.

・「性別が偏っていると少ない方の性別がその分野(職業)を選ぶのに心理的障壁がありそれを取り除くため」に導入する.

さらにさらにさらに続くXerオーキド博士の返答

・合理的な理由になっておらず反対派は納得しない.

・男性で有能な方に対する逆差別になりえる.

・例えば優秀な男性がポストを限られることで高い研究能力を発揮できないことになりかねないという論もあるはずだ.

 自衛官の事例を巡る問題提起に関する議論の部分

・採用側はメリットのあることしかしない.

・単なる差別の問題ではなくもっとスケールの大きい問題である.

・女性自衛官が多くなって何が問題なのか?女性自衛官であるメリットもところどころ見受けられ貴重なはずである.

山田かおり先生によるXerオーキド博士に対する長文反論

・「女性枠が女性の得になるから女性が求めてる」という前提は間違っている.

・国際的に鑑みて日本の理工系女子率が低い・大学教員に女性率が低いことが問題になっている.

・また少子化で人手不足で女を外で働かせたいという課題もある.

・政府は調査して他国制度とも比べたうえで実施している.

・して最終的には女子枠という制度設計と実施に手を出した.

・自衛隊には戦闘能力に優れる男性が入るべきであって女性が非力なのは事実.

・アカポスで男性の有能な研究者がいたとするのならばこれまで女性の有能な研究者もいたはずである.

・ゆえに現在の制度は(数値上でも)バランスが取れていて女性限定公募するのは悪くはない.

Xerオーキド博士とうとう”切れる”

・これまでのツケを男性に払わせろということか?それならば納得はできない.

山田かおり先生なりの結論

・「これまでのツケを男性に払わせろ」全くその通り.

・これまでのツケを(ある意味)関係のない男性に払わせる必要がある.

・個別の事案に関して性別の問題を感じるのであれば行動で示してほしい.


ディベートとしては引き分け

議論の筋としては山田先生が女性が不遇されていた時代があるのでそれを清算しなければ科学歴史的な都合がつかないとしているのに対してそれは暴論過ぎるというXerオーキド博士の反論があるように私には見受けられる。自衛隊に関しては肉体上のproblemがあるので女性が少ないのは当たり前であるとも主張。これに対してXerオーキド博士はそれも暴論で女性であるがゆえの自衛官としてのメリットもあるのでアカポスだけでポジティブアクションを取るのはおかしいという。

どっちとも合理的な面がある

私は考え方としてどっちとも合理的であると思う。ただし山田先生の最後の意見は明らかに戦争責任の追及論理と同じだ。関係のない男性にまで問題が波及するのは明らかに不合理的である。だがロザリンド・フランクリンのような女性もいたことを外因として考えるとまた違った結論が導けるように思えるのも事実。

NHKは早急に特集を組むべき~もっと幅の広い議論を~

両者の論を公平に見て結論から言ってしまうともっともっと幅の広い議論をすべきであるということだ。ここからはあくまで私信に過ぎないがとっととNHKはクロ現とかでこの問題を取り扱うべきだ。幅広く国民的な議論を巻き起こし問題が根本的にあるのであればその意見をいち早く裁判所に伺うべきだろう。最終的には裁判所が関係する民間の諸制度と比べて判断を下すことになるはずだ。

「差別は良くないが逆差別もまた良くない」

ただしひとつだけ追加して言えることがあるとすれば「差別は良くないが逆差別もまた良くない」という列記たる常識だと私は個人的に考える。また女性限定公募のようなものが無くなる時=女性差別があったとしてもそれが皆無になり真なる意味でスーパーフラットな社会体制が構築されることを望んでやまないのもまた真実に近いスタンスだろう。

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