「Marathon」SS~Reboot&Bob&Honor~


久々だな”青年将校”。こちらデュランダル。”例のブツ”と違ってAIとは感動のご対面とはいかんだろうから手っ取り早く任務を言おう。緊急の用事があるんで君を冷凍装置から解放してからもう数十時間経つ。どうだ?軒並み住み心地の良い船だろう?そうだ!いつでも我々の敵は奴らプフォールだ。君がこのプフォール護送船のターミナルにアクセスすることはよくわかっていたから事前に予約しておいたシステムセットを私の手によって残しておく。恐らく今君がこのターミナルを見ているのは私がシステムセットを用意してからたった2~3時間後に過ぎんだろう。


セティでの戦い・かの忌まわしき戦禍と記憶を奴らプフォールどもに我々がもたらしてから既に20年以上が経つ。君がマラソンの船から出発して戦功を次々と挙げやつらを太陽系の隅まで追いやったことは本当に素晴らしいことだった。君の活躍によって捕縛できたプフォール船艦の標準テーザ光線兵器は君自身が眠っていたここ20年の間実に役に立ったんだ。我々はスフト式の光学レンズを元にプフォールのテーザ兵器にその技術を応用することに成功した。小型の先端ピーニングによって宇宙船を大小問わず遠距離から狙撃できるものだ。プフォールの艦隊は次々と打ち崩され兵力で劣っていると言えども我々は大戦果を挙げている。


この度君を冷凍装置から無理やり起こしたのは奴らの最新の兵装庫を潰してほしいからだ。やはり兵力で劣っているのが人類とそのサポートAIの主たる問題だ。獰猛なエイリアンを駆逐するにはまだまだ前途多難。プフォールの兵装庫を潰せば兵力差で劣る我々にも此度の大戦の勝機が見えてくる。そのため優秀な兵士である君を激戦地であるエイリアンの惑星に送る算段だ。このプフォール謹製の惑星はスフト・カーの族長らとプフォール軍勢との間で長らくその停戦ラインの上にあるものだ。極めて重要な大戦の要衝となるポイントである。君にはまず手にした武装~マグナムと炸裂弾倉付マシンガン~を手に彼らの戦力を少しでも削いでもらいたい。



そして今度ばかりは私も君を一人にしない。君の友人である”ボブたち”がマグナムを手に取って君とともにプフォールの陸戦部隊と戦ってくれることになった。”ボブ”が誰かって?プフォールの閉口炉にいた人間たちだよ。彼ら人間たちに条件を提案した。銃を手に取って君と一緒にプフォールと戦うか?不安定なプフォール製の冬眠炉・睡眠装置に戻るか?だ。”ボブ”は喜んでマグナムを手に取る方を選んでくれたよ。人間とする交渉は我々AIにとって実に簡単なんだ。条件を示せばいい。彼らが納得するようなものを選んでね。


彼ら”ボブたち”には外科手術も施させてもらった。レーダ機能をその内耳と眼球にダイレクトに繋げておいたんだ。これによって即席の民兵組織をネットワークすることが可能になった。この手術によって各”ボブら”は君のレーダ内耳ともコネクトして組織化マップを自分らの脳内の電気信号に変換することが可能になった。直接脳内へ情報を大量に送り付ける荒業だがプフォールの大船団と地上部隊に相対するためにはリスクをしょってでも必要なことだ。


そういえば君の懐にあったデータドライブの中にあった動画データも拝見させてもらった。君にとって君の父親の存在はとても大きかったんだな。AIは統計を理解しているものの感情までをも理解しているわけではないのでなんとなくとしか私にはわからない。今一度ドライブの中にあったこのターミナル上の映像通信を通じて再生しておこう。感動のご対面と行くだろうか?さて次の闘いのための勇気を持てよ。

ターミナルの映像通信からは君の父親の声とかなりかすれたディスクから朧げな映像が流れた。

『人としての名誉を…忘れるなよ…』

そのワードは幾度となく私を闘いに駆り立ててきたものだった。

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