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— NHKスペシャル(日)夜9時 (@nhk_n_sp) September 7, 2025
1兆円を託された男 ~ニッポン半導体 復活のシナリオ~
7(日)夜9時~[総合]
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ラピダスは失敗する
NHKスペシャルで放映されていたこの番組を先ほどから見ていて確かにその内容は面白いと思った。どっちかというと「国策の賭け」という競馬的な観点から見ての事であって経営の筋としては当然ナンセンスだ。私はラピダスには否定的である。その論拠の説明は小幡績さんが東洋経済で述べている論が一番核心に近いと私自身思う。この記事は東洋経済オンラインに昨年12月にアップロードされた記事なようだがコアな点で理論的に評価できる。記事の要点をまとめながら私なりの考え方を付記する形で付論としてゲヲログ1.5で述べてみよう。
安全保障上の課題しか見えてこない
まず小幡さんが述べているのが北海道にある工場の立地の問題だ。小幡さんも「これは政治的な理由からだ」と述べている。国際的な枠組みの中で立地を国内に据えるのはガチの安全保障の問題・課題であり地域紛争や戦争などが巻き起こっている現代社会でこそ役立つというだけのことだ。つまり国産半導体はゲームチェンジャーになりえないのだ。この点を小幡さんはむしろ逆評価している。つまりラピダスが成功するには「政治的問題がむしろ不可欠な状況にある必要がある」のである。グローバル化した国際協業社会でこのご時世”国産”が成功するには保護主義的な条件が必須であることが求められる。皮肉である。これは池田信夫さんも述べている通りだ。
提携先にデファクトスタンダードを保っている会社がない
次に提携先が良くないことを小幡さんは指摘している。チャレンジャーになっても高度に発展し寡占化したIT業や半導体産業などの最先端領域で勝つことはできない。圧倒的に存在感を放っている既存のファウンドリには勝てっこないのだ。協業先が良くない…というより単なる短期的なパートナーシップになっていると私は思う。ラピダスは国民の貯金から引き出したお金で常勝軍団に挑もうとしている。MSのWindowsOSが寡占化しGoogleが広告産業を寡占化しているようにそこに切り込んで勝利するのは容易ではない。半導体のファウンドリ業界では同じことが言える。デファクトスタンダードがこの業界ではとても重要なのだ。これについても池田さんが述べている。
ラピダスはその設立目的がはっきりしない
次に小幡さんが挙げるのが「戦略がはっきりしない点」である。私もそう思う。国産半導体の目指す所が産業振興なのか人材育成なのかどこの国民国家の幸福なのかがはっきりしないのである。増してや今や世界的なリセッションが起こるのは間違いない状態にあると私は思う。「2nmの半導体を国産化する意味はどこにあるのか?」という単純な問いにラピダスの社員の大半は答えられないだろう。だからこそ私はラピダスの社員に「なぜ国産化する必要があるの?」「なぜ2nmである必要があるの?」と問いたい。小幡さんが言うようにラピダスは曖昧な国策企業なのだ。ここが根本的に問題である。
21世紀の巨額投資は民間によるものでなければならない
また民間投資ではなく国策投資であることも小幡さんは問題であるという。日本の産業でうまく行っているのはゲームとかアニメとかの民間投資業である。これには理由があってグローバル化して企業体社会が全面に押し出される現代の資本主義の社会で民間投資の重要性が時代の趨勢と共に増しているからだ。スピード感があるのは当然民間投資であり国策の業界支援などというイミフな宝箱に賭ける意味がとんと見えてこない。国産半導体などというわけわからん意味も説明できない単なる大船政策に賭けるカネには根本的に意味がない。さらに池田さんも同じような国産スパコンのことを「時代錯誤の大艦巨砲主義」と昔から呼んでいる。
ラピダスの向いている戦略のベクトルはことごとく逆である
小幡さんは続けて民間のほうが良い人材がいるということを指摘している。また実際今やカネも民間企業のほうが余っている。時価総額で見れば分かるがNVIDIAやMSの時価総額は当然のごとく巨額であり政府よりも民間社会のほうが潜在的にカネを持っていると評するのが自然だ。いまやMSの社債のほうが米国債よりも格付け会社による格付けでは上である。リスクを取った国策企業では21世紀には成功できない。20世紀と21世紀では時代の要請がチェンジしている。リスクを取れるのは民間企業である。ラピダスは向いているベクトルがことごとく真逆なのだ。
唯一の道~成功するためではなく失敗しないために~
つまりラピダスは無理なことを根源的にやろうとしている。だから無理なのだと小幡さんは言う。私も同意する。成功する余地はない。否あるとしたら地政学的なリスクを加味した極めて小さい可能性だけだ。利点は北海道工場という国内にありそこが地政学的リスクを加味した安全保障的問題に起因するというだけである。そこだけがラピダス成功の唯一の道である。だがこれは失敗しない道であって成功する道ではない。恐らくASMLやIBMやTenstorrentはそこに気付いている。気付いていて近寄りすり寄ってるようにしか見えない。