兵器の売買は外交交渉カードになる~強靭な素材発明・ゲームシミュレーター開発・ネットワーク研究に見える知識の矛盾

現実的に考えて兵器売買は外交カードになりうる

この野党幹部のXポストは「兵器の売買が交渉カードになること自体が大問題」と意見を提起しているがこんな理想論はどだい実現性がない。まず第一に兵器の売買は当然現実問題として外交的な交渉カードになりえる。例えば自衛隊が使用する武器・兵器を交渉カードにしないなんてことが現実的に考えてありえるはずがない。実際自衛隊が使用する兵器類を国産のものだけで割り切って使うことは不可能だ。日本はアメリカと同盟国でありアメリカと正当な兵器売買があるからこそ国土を守れるのだ。

事実アメリカのミサイル技術がなければ日本は守れない

例えばパトリオットミサイル(米レイセオン社製)などの防衛軍備品をアメリカと協調して整備しないとしよう。そしたらば北朝鮮から飛んでくるミサイルに対してどう対処するのだろうか?反撃能力を持たない自衛隊に防衛存在意義があるか?当然外交とはしたたかなものであり交渉の仕方次第でどうとでも変わってくる。だがその実地的な交渉の現場において兵器の売買が交渉カードになるのは現実を見れば当然のことではないか。日本の国益を最大限守るためにそれは必要なのだ。

仮に外交カードにならなかったとしても

たとえ仮にこの現実的配慮という意味合いが否定できたとしよう。「兵器の売買が交渉カードになること自体が大問題」だったとしてこの野党幹部は兵器とはどういう定義か?について全く理解を示そうとしてない。これがそれこそ大問題なのだ。仮にも知識層を名乗り反意があるのならばその理由・根拠もしっかりと明記すべきだ。例えば強力な素材をある企業が開発したとする。そいつをミサイルや防衛装備品に応用できないという理由付けは全くない。

技術の軍事転用の持つ汎用性

このように素材メーカのイノベーションという地味な領域でさえ兵器に実応用することは十分可能だ。例えばミサイルのヘッダーにそういった強靭な素材を応用したり防弾チョッキをさらに強力なものにするために応用したりするという事例だって十分考えられる。この技術の汎用性・民生技術の応用性をこの野党幹部は全く理解していないものと思われる。チェコのゲームメーカが作るFPS「ARMA」シリーズを買うことだって援用的に考えれば消費者であるゲーマが軍事的な貢献をすることである(ぶっちゃけ私も買っているので軍事に民生的貢献しちゃってるっていう)。このように応用派生系はいくつも考えられるのだ。他方まっとうな知識人とされるかたが言っていることにもおかしいことがいっぱいある。

似た問題は事実誤認にもある

例を挙げよう。経済学者の池田信夫は自身のブログで京大の軍事研究批判を逆に批判し「それではインターネットの研究はできない」という。これは厳密に言って池田の間違いである。そもそも「インターネットは軍事研究の副産物ではない」し「インターネットは核戦争を鑑みて作られたものではない」からだ。これについては喜多千草の著書に詳しいので池田はこれを読むべきだ。同著には答えがいっぱい載っているのであえてここでは多くを語らない。

正しい知識を持たないことへの危機感

本来それこそ大問題なのはこのような高度な学識を持っている知識人が軍事研究を基盤とした兵器に関する汎用的な知識を持っていないことだ。兵器売買自体・あるいは兵器売買を交渉カードにすること自体が大問題なわけではない。軍事・軍備・兵器に関する安全保障的な正しい把握力を持つことが如何に大切なのかということをこの事例は表している。つまるところ先述したXポストをしている野党幹部(この程度の知識で有力議員ということらしい)も池田信夫も間違っているのだ。

「前提神話」と同じく「前提誤認」もまた問題である

日本の安全保障環境が悪化し事態が深刻化している今兵器や軍事・軍備に関しては知識人が正しいことを把握し基礎的な教養としてとらえておくことは重要だ。それは単に兵器売買が外交カードになること自体を問題視する「前提神話」をしっかりと否定することになるだろう。そうした「前提神話」では国は到底守れっこない。その同じ意において「インターネットが軍事目的に作られた」とする間違った知識もまた大問題なのだ。言葉で表現できるニュアンスとしては池田は「前提誤認」しているといえる。正しい知性を持って知識にふれ新しいメメントをしっかりと盛り込んで考える…これが「前提神話」や「前提誤認」を防ぐため誠に重要な「実地軍事的知性」なのである。

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