防衛研究所の偉い人によるSFアニメと戦争を題材に取った書籍を精読していく記録を残す。最近あまりTVで見かけないと思ったらご本人のXアカウントにその旨の報告があった。曰くところによれば制作サイドに併任になったことがTV露出が減った原因だという。端的に言うとこの本は精読する価値のある”天才による本”だ。高橋先生は博士号を取るつもりは現在も以前からも無かったらしくノンドクターでもここまでの本を執筆できるという事実に驚きを禁じ得ない。この書籍がそういった”天才による本”だということは構成を見ただけでよくわかる。この書籍は単なる起承転結があるだけとか単なるアニメ本なだけとかそういうレベルの本ではない。
まず第一章では戦争とアニメの関係性が総観して述べられている。この第一章ではSFアニメが子供向けのタイトルから脱却した様子が述べられている。次に第二章ではSFアニメと国際政治の関係性が述べられている。この第二章ではSFアニメとリアルな国際政治の関係性を観察することでアニメーションを商業作品として割り切る必要性について述べられている。第三章では様々なアニメIPの個別の作品についての概括が述べられている。第四章ではSFアニメの戦争兵器について述べられている。第五章ではトレンドともいえる人工知能と戦争の関係性について述べられている。第六章ではさらに深めにスパンをとりながら各有名アニメーションを振り返って戦争の概略がどのようにとらえられてきたかについて述べられている。
総じて言えるのは高橋先生が精緻な軍事的な知識をもとにした”ご自身の研究バックグラウンド”を確固たるものとしてお持ちであるという点。この本ではその傾向が実に確かに述べられている。本書においては(あえて軍事専門的な言い方に対する理解無くして言うが)マクロな戦争とミクロな戦闘との違いが現れ出ているのだ。そしてそのマクロとミクロの違いをシームレスに繋げることで独特な研究実地解説のスタンスがしっかりとした形で本書の読者に明快に簡潔に伝わるようになっているのである。ここが高橋先生の真骨頂であるご自身の研究の”色”であると思う。それこそが我々が学生時代論文指導教員に耳にタコができるほど言われたオリジナリティの本質そのものなのである。では次ページから第一章SFアニメが描いてきた戦争のリアリティという項から精読して考えたことを述べていく。