私が個人事業を立ち上げたのが今から15年前である。実は事業を立ち上げるのは簡単で誰に依頼する必要も全くない。うどん屋を作りたいと思ったら税務署にうどん屋の暖簾をかけたその日から起算する個人事業の立上申請書を提出すればいいだけなのだ。ゲームの個人事業主も同じで自宅で開発機材をそろえたころを起算日とすれば問題ない。そうと経たないうちに会社法が改正され有限会社は新たに設置できなくなった。だが株式会社は1円で起業することができるようになりその設立は個人レベルで十分可能だ。所得が少ないうちは確定申告する必要も生じない。
その後私が入学した大学院のマスター課程ではMBA担当の講師がこう言っていた。「ソフトバンクの経営モデルに基づくのならば孫正義はみかか(NTT)を買収する必要がある」と。もちろんそんなことをしたら独禁法に触れるはずだがこのセンテンスは妙に事の本質を的確に得ていると思う。時の首相であった中曽根康弘が産業改革を断行し電電公社・専売公社・国鉄の三社を民営化を実現したようにである。じゃあNTT・JT・JRがそれぞれ事業規模を半永久的に拡大していく流れに反することが出来るかというとそうでもない。かたや民営化された以上稼ぎは稼がねばならないのも事実だ。その一方こうした旧国営会社は公共性という名目もある。こうした会社は実はエンタメ性の強いゲーム分野よりもより複雑な事情を背景に抱えているかもしれない。経済学者の池田信夫は日本でリニアモーターカーを走らせる意義はほとんどないと自ら立ち上げたメディアで述べている。
ここまで来ると一体何が資本主義の目標で何が修正資本主義の目標で何が社会主義の目標なのかがトント私にはわからない。中国共産党は資本主義の限界が来た頃社会主義化した経済体制を導入するつもりだと評する論者も未だに多い。だからこそわからない。資本主義とは何か?会社とは何のためにあるのか?まるで蛇がもう一匹の蛇の尾を飲み込まんとしている図のように言説は逆の言説の本質をとらえ離さない。だが他方事の本質はどっちの蛇が主体になっているかもわからない。これは卵が先かニワトリが先かのようなもので会社があるから利益があるのかもしくは利益があるからこそ会社があるのかということに似ているインスピレーションの性質も持つ。少なくとも私にとっては純粋に資本主義とは八方塞なものそのものである。