私が厨房だったころ流行っていたゲーム制作ツールに「Click&Create」というものがある。これは日本語版が富士通から発売されていた太古のノンプログマラブルゲーム制作ツールであり「Klik&Play」の後継版である。プログラミング要らずのゲーム制作ツールであり厨房の夢であるゲーム制作(ゲームを自分で作りたい!)を簡単に実現できるシロモノだった。多くのClick&Createrがこのツール片手に関連情報を必死に集めゲーム制作に挑戦していた。日々限定的なツールを駆使して多様なゲームを作っていたんだ。その多くは(今やその輝きどころかかけらもないというのが正直なところだが)Vectorというフリーソフト配布サイトでいわゆるフリゲとして配布されていた経緯がある。
この頃のゲーム開発の界隈を振り返ると感慨深いものがある。ノンプログマラブルなゲーム制作ツール「Click&Create」(現「Clickteam Fusion」)の総帥ともいえる存在にペナーがいるだろう。彼はこのゲーム制作ツールの情報集積所の元管理人であり日本での情報配布に貢献してきたかた。また同氏は世界で初めて「Click&Create」でオンラインゲームを作ろうとしていたかただ。断定してひとつ言えることがあるとすればこの試みは間違いなく賞賛すべきことだったということ。「Click&Create」はオンラインゲームとは当然相性がかなり悪い。だからプラグインのようなものを積極的に導入してオンラインゲームを作ろうとしていたのだ。そのニッチな要望に応えようとしたい熱意は本当に凄いと今でも思う。「Click&Create」でオンラインゲームは作れるのだ。
そしてそのお仲間だったのが今やSTG「ネコネイビー」でSteamerにとっても広く知られる猫忍者コアだろう。このかたも同ツールを用いて疑似3Dゲームを作っていた実績がある。彼のハンドルネームが違かったころ作られた「金マイライフ」(今ではUnityroomで「金マイライフHD」が公開されているが)では平面ジャンプが実装されていた。平面ジャンプという概念は2Dゲーム制作ツールである「Click&Create」では到底実現が不可能だった。だが当てはめ変数の弄り方に工夫を凝らすことで疑似的にz軸の実装を実現していたのだ。今や彼のゲーム制作ツールはかの有名な「Unity」になってしまったがエンジンとして「Click&Create」を使っていた技術力の蓄積はどこかで役に立っていることはまず間違いない。現代につながるゲーム制作技術の継承である。
またPEPOもそうだろう。彼もペナーの作った「Click&Create」の技術総合掲示板のコミュニティに当時から頻繁に出入りしていて古典的なゲーム制作のノウハウを貪欲に吸収し続けていた。彼はまさに熱意のゲーム制作者である。当時から研鑽を辞めず諦めなかったから高度なゲームノウハウが見についたのだろう。今そのノウハウはゲーム音楽コンポーザとして活動するPEPOの原動力になっているはず。そして今や日本を代表するインディーゲームスタジオであるteam ladybug(代表作「DRAINUS」「BLADE CHIMERA」)のメインロールプレイヤーでもある。経緯を見て通るにゲーム制作への熱意が高まって開発能力に強みを持った代表的な事例でもあるはずだ。
また間違いなく日本を代表するハイクオリティインディーゲーム制作者で「ひもじ村」の管理人ウータ(別名:イキキ)もそうである。当時からフリゲ制作者としてネット界隈で広く知られ今でもハイクオリティのゲームを「Click&Create」の後継版である「Clickteam Fusion」で作っている。優れたアイデアがあればノンプログマラブルのツールで革新的なゲームを多く作れるのだ。多産なゲームクリエイターでもあり売ろうと思えばSteamを中軸にして間違いなく独立しゲーム一本で生きていける能力を持っているのだがそっちの方面にはいかずに建築系の職業をこなしているという。あえて厳しい道を選んで好き勝手にやっているらしいと聞く。ファンとしてはマジでもったいないと思う。だがその姿勢はガチ尊敬すべきクリエイターなはず。
こうしてつぶさに「Click&Create」のユーザの系譜を見ていくとひとつだけ気付くことがある。それはゲーム制作には夢と隣り合わせの努力が必要だということ。当然のことだが売れなけりゃオシマイである。だが売れれば夢を売れる。既にゲヲログでも語ったようにゲーム制作は統合技術シミュレーションエンジニアリングの集合体である。そのためもしゲームを完成版として作れればどの分野にも派生してそのノウハウを活かせるのだ(極端な例がPEPOのゲームコンポーザとしての活動かもしれない)。だが今作れなければ売れるものは到底作れないし今作れなければゲーム自体永遠に作れない。だからこそあなたがゲーム制作者になりたいと思うならば今すぐ作るべきだ。
専門学校や大学に通ったからといって作れるようになるわけではない。学校ではゲーム制作のノウハウは教えてくれない。それは自分で全部やるべきことだからだ。手取り足取り教えてもらおうというのならば教科書を買って今すぐPCの前に座って読んで1から100までプログラムを組め。学校のプログラミングのテストの点数なんぞ関係ない。ループ処理の問題の配点分点数をとってもプログラムを組めるとは限らない。徹底的に言えば作れなければ意味がないのだ。逆に作ってこそ意味がある。「習うより慣れろ」と教員がPGがらみの授業でよくよくいうのにはその現状がある。同じ意において「Click&Create」がらみのクリエイターのメンツたちが多様に羽ばたいている現状は感動的なものがあると同時にかな~り残酷なゲーム制作の面も表現している。
「今作れなければ永遠に作れない…」クリエイターと共にある夢と現実のハザマで彼らは今もゲームを語り続けている。